2022/06/21 22:38

大田区にありました喫茶店「仏蘭西亭」(ふらんすてい)をご紹介いたします。

五反田駅と蒲田駅を結ぶ東急池上線の千鳥町という駅から歩いて5分ほどの場所にありました。


仏蘭西亭さんは、48年間という長い年月を営業されたのち、5月31日をもってその歴史に幕を閉じられました。

私どもは営業中にお客としてお伺いすることはできなかったのですが、お引き取りにあたってマスターにいろいろとお話をお聞かせいただきました。ご両親が始められたというこのお店を二代目として引き継ぎ、長い間営業を続けてこられたマスターのご苦労は並大抵のものではなかったのだと感じます。

仏蘭西亭ができたのはマスターが生まれてすぐの頃だそうです。それからご両親がおふたりでお店をされてきたそうですが、マスターが高校1年生のときに、新宿区の曙橋のあたりに2店舗目としてドトール系列の喫茶店チェーン「コロラド」がオープンします。
マスターは高校卒業後すぐにコロラドにお父様と立ち、お台場に移転する前のフジテレビが近くにあったこともあり、大変忙しいお店で喫茶店の営業を学ばれたそうです。

その後お母様がコロラドを切り盛りするようになり、マスターが仏蘭西亭を一人で任されることになったのは22歳のとき。それまでお父様と一緒にコロラドで経験を積んできたとはいえ、まだわからないことなどもあり不安もあったそうです。
2店舗目の内装の費用なども多くかかっていたそうで、家族で一致団結してとにかく無我夢中で日々働いたとおっしゃっていました。

仏蘭西亭さんの店内は全部で20席ほどあり、入ってすぐにL字のカウンターがあり、奥のほうにテーブル席がありました。
下の写真は店内奥のテーブル席を照らしていたステンドグラス風の照明です。

「日が暮れて暗くなった店内でこの照明を見るとなんだかホッとした」と思い出深そうにスタッフさんがお話ししてくださいました。

浅煎りと深煎りの二色の珈琲豆を閉じ込めたお店のドア。
よく見るとドアの取っ手はワシを模ったものでディテールまでとても素敵なお店でした。


仏蘭西亭さんの人気メニューはサンドイッチやスパゲティグラタンだったそうです。
トーストしたパンにトマトやレタスを挟み込んだアメリカンクラブサンドは特に人気で、アメリカンクラブサンドを提供している喫茶店自体そう多くはないので珍しかったのではないでしょうか。
ほかにも、海草スパゲティーなど変わったメニューがあるのも仏蘭西亭さんならではでした。


ご両親が始められた昔からあるメニューを引き継ぎつつ、新しいメニューを開発したりもしたそうです。

様々な原材料や野菜などの値段が高騰する中でも、サラダなどの量は決して変えることがなく、お客様への心遣いや配慮を忘れることがなかった、というスタッフさんのお話からはマスターの優しく芯の強いお人柄を垣間見ることができました。
お店の長い歴史の中で、アルバイトのスタッフさんも多数いらっしゃったようなのですが、10年ほど勤務される方が多く、マスターとスタッフさんの信頼関係も厚くとても居心地がよかったとスタッフさんがおっしゃっていたのが印象的でした。

仏蘭西亭さんのお客様は常連の方がほとんどで、地域に深く根ざした喫茶店だったと感じます。48年前のオープンの頃から長年通っていらっしゃる方もいて、中には95歳のお客様がお孫さんと一緒に来てくださっていたようです。最寄り駅である千鳥町周辺には、古くから営業している喫茶店はほかになく、一日に数回日課としてお越しになる方などもいて、閉店のお知らせを出してからは常連さんの間で反対の署名活動まで起こったそうです。

残念ながら仏蘭西亭さんは閉店されましたが、こうした全ての歴史とともに、お引き取りさせていただいた家具や食器が次の方に引き継いでいけたら大変うれしく思います。


仏蘭西亭さんからはテーブル、椅子、コーヒーカップやお皿などの食器類などをお引き取りいたしました。
下記にてご紹介いたします。

厚めの木板のテーブルです。頑丈なつくりで重量があります。


曲木の椅子です。テーブルとともに、時折マスターが綺麗に拭き上げワックスをかけていたというとても大切に使われてきたものだそうです。


店内の真ん中に設置され長年使われてきたレジ台です。小ぶりで使いやすいサイズかもしれません。


「本日のサービスコーヒー」看板です。壁にかけて毎日使われていたものです。


食器などは販売準備が整い次第、順次店頭にて販売いたします。今後もネットショップに掲載するものもあるかもしれません。

大切に使っていただける方にお譲りできることを願っております。
ご注文を心よりお待ちしております。

お問い合わせは下記メールアドレスよりお願いいたします。
tokyo.muratashokai@gmail.com