2016/08/27 17:02


2016年7月、小伝馬町で45年営業を続けられた喫茶店『コット』が閉店いたしました。
小伝馬町駅からすぐのこの建物は、戦後からある古い建物で、当時は配給所として使われ、近所の住民にお米などを配給していたそうです。
この建物は取り壊され、マンションになってしまいます。東京のこの場所で一軒家の喫茶店が現在まで残っていたことが珍しいことではありますが、何とも残念です。


ちなみに『cotto』とはイタリア語で「煉瓦」という意味だそうです。
当時は同一区画内に同じ屋号のお店があってはいけない法律があったらしく、近くに『コットン』というお店があったからとか・・というお話もマスターから聞きました。


店内は煉瓦がふんだんに使われている・・わけでは全くないのですが、褐色がメインのいかにも70年代の喫茶店という感じです。壁は桜材を使っているそうで、「この壁ごと誰かに使ってもらいたい」とマスターは仰っていましたが、確かに45年経った今でも古びておらず、時間とともに味わいが増しているように見えます。(桜材は現在はあまり使われない高級木材です)


『コット』の岡田マスターはとても気さくな方で、常連のお客様も老若男女の多くの方が来店していたように思います。
中にはもう20年以上も通い詰めたというお客さんもいらっしゃいました。
7月の閉店間際には、カレーを注文されたお客さんと岡田マスターとの間で、
「このカレーはしょーっぱいかもしれないね、涙で煮詰まってるから」
「そんなんじゃ危なくて食べれないや」
なんて会話が交わされていました。


『コット』のメニュー表です。
こちらのカレーライスが有名で、マスター手作りの数量限定メニューとなっています。私もいただきましたが、小さいころ食べた実家のカレーのような懐かしい味がしました。
難波里奈さんの著書『純喫茶、あの味』(イースト・プレス)にも取り上げられています。純喫茶の様々なメニューが難波さんによって魅力的に紹介されている名著です。ぜひご一読を。


こちらがカウンターです。
岡田マスターは珈琲を淹れたり食器を洗ったりする手つきがとても手際よくて、カウンターに座っているとついつい見とれてしまうほどでした。
都合により写真は撮れなかったのですが、カウンターの後ろにはもう一部屋ありまして、こちらとは違った、黒を基調とする椅子やテーブルが使われています。
常連さんはカウンター側、日本橋のサラリーマンのおさぼりスペースとしては後ろ側と、お客さんのすみ分けもうまくできていたように感じました。

これはマスターから聞いたのですが、東野圭吾の小説『新参者』には『コット』がモデルとして登場しており、ストーリーの中で割と重要な役目を果たします。詳しく説明するとネタバレになってしまうので、ご興味のある方はご一読を。


こちらは壁に飾られていた珈琲豆の産地の地図。


この椅子とテーブルは、45年前のお店のオープン以来、ずっと使い続けられてきたものです。
座面の破れもほとんどなく、使い込まれた風合いも良い具合です。
岡田マスターからは、このお店を好きだった方に使ってもらえたら、と聞いています。
コットのお客さんだった方ももちろん、そうでない方も、小伝馬町にこんな喫茶店があったということを知って、大事にしていただけたらと思っております。

ご注文、心よりお待ちしております。

コット 商品ラインナップ
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